商品プレゼンテーションは別名「クロージングの始まり」とも言われており、大きなYES(ご契約)に向けて、小さなYESを積み重ねるステップです。
ここでは商品プレゼンテーションで使える「小さなYES」をより効果的に引き出すスキルをお伝えしていきます。
※商品プレゼンテーションは以下を参考にしてください。
効果的な金額提示「アンカリング効果&両面提示」
数値データだけでは、事前に比較する情報がない限り、人はその良し悪しを判断できません。
例えば、
「〇〇製のスマートフォン お値段39,800円!いかがですか?」
「なんと弊社は12,000円で提供いたします!いかがでしょうか?」
「このスマートフォンはなんと、メモリが6GBでサクサク動作するのにお値段50,000円なんですよ!いかがですか?」
この場合、お客様に事前情報があれば良し悪しを判断できますが、比較対象もなく相場もわからないお客様がこのような提示を受けても
「はぁ…それってどうなんでしょう」
と、良し悪しは判断出来ません。こちらが、自信満々に金額提示しても、相手の中に事前情報がなければ薄い反応しか返ってこず、感動はないでしょう。
そんな中、金額提示で感動を生むためには、相手の頭の中にデータの判断基準となる『数字のアンカー』を落とす、という手法が効果的です。これを心理学用語で『アンカリング効果』と呼びます。
アンカリング効果とは
最初に提示された数値が相手の中に強く印象に残り、数値データなどの価値判断に強く影響を及ぼすという傾向です。語源は船のいかり(アンカー)です。アンカーを海底に下ろすと、船はその周辺でしか動けなくなります。そのようなイメージから『アンカリング効果』と名付けられています。
ここで、アンカリング効果を使った簡単な例をお見せします
「〇〇製のスマートフォン お値段59,800円のところ…今だけ大特価の39,800円!いかがですか?」
「日本の平均単価は34,000円です。そんな中、なんと弊社は12,000円で提供いたします!いかがでしょうか?」
「50,000円のスマートフォンだとメモリが3GBが相場でしょう。ただ、この商品はなんと…メモリが6GBでサクサク動作するのにお値段が3GBの相場と同じ50,000円なんですよ!いかがですか?」
このように、最初に数値データを提示することで相手の頭の中にモノの判断基準となるアンカーが落とされます。すると、相手はこの数値を基準に、商品の良し悪しが判断できるようになります。これにより、『相手のYES』は圧倒的に引き出しやすくなります。
上記は、かなり簡単なアンカリング効果の例でしたが、より強く数値データを印象づけることで、相手の中にその数値にアンカーが深く刺さり、金額提示によってその差を大きく見せることで感動を生みやすくなります。いきなり金額を見せるのではなく、一旦アンカーを刺すことにより、相手のYESが引き出しやすくなり、ご契約という大きなYESをいただける可能性がグッと高まる…かもしれません。
メリットばかりは怪しい「両面提示の法則」
とは言え、人はメリットばかりを提示されると
「こいつ、怪しいな」
「詐欺師か?」
「うさんくさいな…」
と思います。そうなると、お客様は一旦『決断』を持ち帰って、
「デメリットは何かないのか!?」
とインターネットでググりまくるでしょう。
そうしているうちに、根も葉もないような悪い評判などがお客様の目に尽き(インターネットはネガティブ情報の宝庫)、『お断りされる&自分への信頼を失う』という可能性が大きくなります。
そうならないために、メリットだけではなく、あえて『デメリットの提示』をしっかり行うと良いでしょう。これを『両面提示』といいます。
【両面提示の例】
「〇〇製のスマートフォン お値段59,800円のところ
…今だけ大特価の39,800円!いかがですか?
…ただですね、このスマホ1点だけデメリットがありまして
…Felicaに対応していないんですよ。」
いかがでしょうか?このように、デメリットを提示してくれたほうが『信頼感&説得力』は増します。そして、デメリットを解決する手段も教えてあげられると営業担当者としての価値も上がっていきます。いわゆるアピールタイムです。
【デメリットの解決策の提示】
「Viewカードというクレジットカードを作ってスマホケースに挟めば、Suicaなどは使えるため問題ないと思いますよ。」
このようなアドバイス(私はこんな例しか思い浮かびませんが…汗)をもらえると営業担当者の価値がお客様の中でぐぐっと上がり、
「○○さんが勧める商品だったら購入しますわ!」
「あなたから買うことにするわ!」
と言っていただける可能性も上がっていきます。
この『両面提示』は金額提示以外の部分でも重要になってきます。メリットを立て続けに伝えるのではなく、デメリットもしっかりお伝えすることで『説得力を持たせる&お客様から信頼を得る』ことができます。そのため、しっかりと『両面提示』をしていきましょう。
お客様を迷わせない「選択のパラドクス&フレーミング効果」
お客様に
「より多くの選択肢を知ってもらいたい!」
「その中から良いものを購入してほしい」
という崇高な思いを抱いて、多くの情報提供をする営業マンもいるかもしれません。
そんな営業マンとしてのお客様に対するスタンスは素晴らしいのですが、実はその行為がお客様を不幸にさせているかも…?ここでは、そんな話をしていきます。
選択のパラドクス
人は選択肢が多すぎると、決断できなくなる現象が起こります。これを『選択のパラドクス』といいます。人は情報が多ければ多いほど、決断するためには多くの情報を捨てなければいけません。そして
「捨てた選択肢の中に、自分が決断したものより良いものがあったら…」
と感じ、より後悔することへの不安が強くなってしまい満足度も低下します。
お客様のことを考えて、「より多くの選択肢を提示してあげよう!」と思っても、実は、その行為がお客様を不幸せにしてしまっている可能性が高いです。そのため、ある程度のお客様の誘導も営業マンには大切です。
そのために、フレーミング効果という心理学を使った一例をお伝えします。
フレーミング効果
フレーミング効果とは、ある情報をどのようなフレーム(絵の額縁)で切り取るかで、見え方が変わるこういう心理学です。
例えば、料亭などのコース料理に「松・竹・梅」があります。
松:15,000円
竹:10,000円
梅:7,000円
このように提示された時に、多くの人は
「松はちょっと高いな…かと言って、梅を頼むのは恥ずかしいな…」
という感情から、『竹』を選ぶ傾向が強いです。
このようにフレーミング効果を使って選択肢を3つに絞り、お客様に購入してほしい商品を『竹』に持ってくることで、お客様は『竹』決断しやすくなります。
営業マンは、お客様に多くの選択肢を与えて『選択のパラドクス』に陥らせてしまうのではなく、ある程度こちらで選択肢を絞ってあげて、フレーミング効果を使うことで、満足度の高い決断を促すことができます。
営業の本質は「モノを売りつける」ことではありません。『モノを購入したお客様が満足感を抱く』ことが重要です。そのマインドを持って、あらゆるスキルを悪用するのではなく、お客様に幸せになってもらうために使いましょう。